大阪市立総合医療センター
岡崎 伸(おかざき しん)先生
1996年3月国立福井医科大学(現福井大学)医学部医学科卒業、
1996年4月医師免許取得、現在は大阪市立総合医療センター 小児脳神経・言語療法内科 部長として勤務
□日本小児科学会:専門医・指導医
□日本小児神経内科学会:専門医・評議員・教育委員会委員、倫理委員会委員
□日本てんかん学会:専門医・指導医
□日本緩和医療学会、小児緩和ケアワーキンググループ
□日本小児血液・がん学会 CLIC(小児医療に携わる医師に対する緩和ケア研修会)ファシリテーター
□関西国際大学 子ども学:非常勤講師 [病弱児の生理・病理・心理 担当]
●チャリティー活動(難病児と家族支援)・一般社団法人スペシャルキッズサポート振興協会 理事・公益社団法人ON THE ROAD 顧問
Q:どのような経緯で小児神経・言語療法内科を専門で診るようになったのでしょうか。
A:研究者の父を近くでみている中で、研究はとても大事なことですが、わたし自身はもっと人にかかわっていきたいと思っていました。高校生の時に、障害のある子どもたちが通う施設が近くにあり、その施設の様子をカトリックの高校の神父さんに聞き、お手伝いをしている方もいて、その影響が今のベースになっていると思っています。大学6年生のときに、子どもへのシンパシーが強かったこともあり、診断した子が成長していく過程に寄り添いながら、ずっと付き合える小児科医が魅力だと感じて、やがて小児科の専門医になりました。神経科には憧れの先生がいたこともあり、神経難病の専門医として“治らないと言われている子どもを治したい”思いで現在までやってきました。いまは小児脳神経科の専門医として、てんかん診療に力をいれています。てんかんに関するアプリはもちろんですが、それだけに留まらずオンライン診療も行っています。
Q:どのような患者さんが先生のところにいらっしゃいますか。
A:小児神経の専門医を頼ってくる患者さんは、てんかん患者さんがとても多いです。ほかにも、ADHD、多動症、発達障害のお子さんも受診に来ます。神経難病は数千種類あると言われていて、遺伝子検査やMRIなどで検査し診断をしていきます。神経難病は遺伝子治療が開発されているので、他の疾患よりも特に新しいものを治療していく機会が多いです。医療的ケアの子も直接的治療にはならないかもしれませんが対処療法として担当することもあります。
Q:先生は多くのチャリティ活動をされていますが、なぜチャリティ活動をされているのでしょうか。
A:わたしが38歳のときに、イギリスで難病児にチャリティをされているイギリス人の方と出会いました。この方は慈善団体で、大阪のさまざまな観光地に病気のある子ども連れていき、楽しませていました。わたしは、そのときまで、“家族やこどもに幸せになってほしい”という思いで、生涯をかけて治療やトータルケアをしていく中で、患者さんのすべてを救っていると思っていました。さらに言えば、医者だけが病気を治せると思っていました。しかしこの方のおかげで、医療的治療は一面であり、人は人を救うには全人的ケアが必要なのだということを実感しました。それからは、医療とチャリティ活動をライフワークにしようと心に決めました。これからも医療技術が進むなか、専門医として責任をもって治療をしながら、チャリティ活動にも引き続き力を入れていきたいと思います。
Q:チャリティ活動の中での課題はありますか。
A:日本ではなかなか進まないのが現状です。チャリティ活動をやろうとする人が少ないこと、また寄付を集めようとすると避けられたり、企業に支援を求めたら煙たがられたり・・・しかし、100人いたら1人ぐらいは感化される人もいるので、その人たちとともに、チャリティ活動を一緒にしています。例えば、患者さんに描いてもらった絵を展示するアート展の開催、マーケットで“車いすでもランドセル”“車椅子でもブーツ”などおしゃれを意識したものも開催しています。
医療従事者の中には仕事以外で患者さんのために活動することについて理解が難しい人もいるので、病院の中で楽しめる遊びをしたりもしています。研究活動の中で、患者さんご家族の声から、いかに遊びや学校が大事かということを伝えています。
Q:先生のてんかんに対する治療方針と、信念について教えていただけますか。
A:てんかんは突然発症するもので、データ的には0歳~1歳が多い傾向です。どの年代も発症をする確率は0ではなく、その数値は10万人に25人レベルと言われています。データとして、てんかんは1個目の薬で約47%が効果あります。効かない場合は薬を足して治療をしていきます。きちんと治療をすれば治る子もいます。てんかんがおさまれば世界が変わります。治療の効果がでない場合には、セカンドオピニオンをおすすめします。わたしの持っている信念として、「HOPE FOR THE BEST」と「PRIPARE FOR THE BEST」 の2つの考え方があります。「HOPE FOR THE BEST」とは、治療・手術・セカンドオピニオン・情報などすべてを駆使して治していく方法です。「PREPARE FOR THE BEST」とは、多少発作などの症状があってもうまく付き合いながら、家族や学校と連携して頑張って生きていく方法です。どちらにしても情報やそれに関する勉強会が必要です。これはどちらも大事なことだと思っています。
Q:てんかん患者さんやそのご家族へのメッセージをお願いいたします。
A:てんかんになられた方、ご家族の方にとって、てんかんをいかに治すかはとても大きいことだと思います。専門医はてんかんを止めたいと本気で思っていて、治療がうまくいって効果があれば、それに越したことはありません。しかし、治療をしても、てんかんが治まらない人もいれば、悪化をしてしまう人もいます。お子さんは学校行事の修学旅行にも行きたいし、プールにも入りたいと思います。まずはてんかんをよく知っていただくことが大切です。てんかんとの付き合い方を一緒に考えていきたいと常に感じています。医学は日進月歩であり、新しい薬でてんかんが止まる可能性もあるので希望を持ちながら進んでいきましょう。もしてんかんが止まらなかったとしても、その子目線の楽しさを一緒に考えていきたいと思います。医者・看護師も常にこのことを考えて、思いを合わせていきたいです。
ベストを目指すなら、お子さんの発作のタイプを知って、てんかんの合併症の薬を考えていきます。この薬を使ったらこのような効果があるという理論も大事ですが、一人ひとりのお子さんにあった薬を使う工夫が大事だと考えます。また、セカンドオピニオンをすることもおすすめします。患者さんによっては医師に遠慮してセカンドオピニオンに抵抗がある方もいらっしゃいますが、オンライン診療で受診することもできるので、症状が改善されない等お悩みがある場合にはぜひ行ってみてください。情報がとにかく大事です。色んな人に相談をし、ご家族と医療機関・学校等が力を合わせて連携し交流することが何よりも大切だと考えています。